2012年6月4日月曜日

SALT-blog



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2012年6月2日土曜日

消費税増税の狙いは、平成の大恐慌!? (BLOGOS 編集部) - Yahoo!ニュース


今回のテーマは「ホントに必要!? 消費税アップ!」(撮影:野原誠治) 写真一覧
わかっているようでわかっていない経済問題を身近な問題に置き換えて紹介する番組、森永卓郎のBLOGOS経済塾。2012年になり、野田政権がいよいよ、消費税増税を本格的にスタートさせました。野田総理の悲願ともいえるこの増税策ですが、そもそもデフレが進む日本で、なぜいま消費税を挙げなければいけないのか!?多くの方が思うこの疑問に経済アナリストの森永卓郎が答えました。そして、森永さんの話から、消費税を増税した日本の未来の姿が見えてきました!

お金が無いから増税は真っ赤なウソ!

小口:鼻息の荒い野田総理。2014年4月に8%、2015年に10%という消費税増税案ですけれども、野党はもとより民主党内からも反対意見が相次いでおります。じわじわと消費税があがってきてま� �が。ところで、しおりちゃんは何年生まれですか?

仲俣:1992年です!

小口:日本で消費税が導入されたのは1989年(平成元年)の4月1日から。となると、しおりちゃんは?

仲俣:もう当たり前のように(消費税)ありましたね。生まれた時は。

小口:100円のものに103円払うのだって、びっくりしましたよね。

森永:計算できないんですよ。3%というのが。

小口:のち1997年に5%に引き上げられましたが、今度は10%に…という状態です。しおりちゃん、なんで野田総理が消費税をアップしようとしているのかって、考えたことある?

仲俣:お金が足りないからっていう単純なことはわかるんですけど。それが何に使うために必要なのかなっていうのは、理解してないで� �ね。

森永:一応、表向きの説明はそうなっているんですけども。多分ですね。財務官僚の人に騙されて、すっかり"消費税をあげないといけない"っていう風に、信じ込んじゃっている…というのが野田総理の現状なんだと思うんですね。

小口:別にこれ民主党になったからって"消費税あげます"って急に変わったわけじゃないんですよね?

森永:いや、民主党は2009年の選挙の時に"まず歳出削減が先だ"と"だから政権を握っている4年の間は、消費税はあげません"っていって選挙をやったんですよ。

小口:でも、マニフェストを全部やぶってく・・・っていうのが民主党の方針ですからね。

森永:元々、民主党が政権をとった時は、小沢・鳩山グループが主流派だったんです。で、この人たちは今� ��も消費税増税には反対なんです。いま、政権を握っているのは、前原・野田グループっていう、また政治の基本理念が全然違う人たちなので、この人たちは小沢・鳩山グループの政策がキライなんです。
小沢・鳩山グループの政策っていうのは、基本的に平等化政策。つまり"バラマキ"なんですよ。例えば「子ども手当出します」「高速道路を無料化にします」「農家に戸別所得補償を出します」みたいなことをやるのが小沢・鳩山グループなんです。
そして今回、野田総理が、内閣改造でやったことは小沢・鳩山一派の一掃。すべてなかったことにしたんです。一川さんっていう前防衛大臣、それから山岡賢次前国家公安委員長。2人は問責決議を受けてはいたんですけれども、この2人を外しました。で、新しい防衛大臣と� ��て、田中直紀さんが入ったことで、小沢グループ継続といわれたんですが。田中直紀さんは小沢系ではあるんですけど、純粋な小沢グループではないんです。嫁(田中真紀子)が、小沢(一郎)さんと仲が良いっていうぐらいの関係なんです。

写真一覧
しかも、前回からそうだったんですけれども。鳩山グループ閣僚ゼロ、小沢グループゼロ。つまり、今回の組閣っていうのは、完全な"脱小沢・脱鳩山"っていうので作ったというのが特徴なんです。

しかもですね、岡田克也(現・副総理)というちょっと顔の恐い人がいるんですけれども、その人を新たに閣僚に入れて、消費税引き上げ担当にすると。これは、小沢さん達、頭にきてると思うんです。
だって、岡田さんが小沢さんに"党員資格停止"っていうのを突� �つけた人ですから。これは結構、犬猿の仲なんです。小沢さんも、岡田さんのことがキライ。岡田さんも小沢さんが大嫌い。こういう反小沢・反鳩山体制を作る中で、自分の政治生命をかけて、何がなんでも消費税をあげるんだ…っていうのが、野田総理がやろうとしていることなんですね。

小口:でもそれって、さっきしおりちゃんが言った"お金が無いから消費税をあげる"っていうのと少し議論がずれてませんか?

森永:お金が無いからっていうのは、真っ赤なウソといえばウソなんです。別にそんな増税しなくちゃいけないところまで、日本が追い詰められてる…なんて話は全くないんです。例えばね、今回消費税率を5%から10%にあげると、いくら税収が増えると思いますか?

小口:単純に税率が倍なら、税 収も倍じゃないですか?

森永:実は13兆円増えるといわれてるんです。

小口:現在は、消費税の税収っていくらぐらいなんですか?

2012年6月1日金曜日

ナイアガラの滝の水が完全に干上がった!?1969年に滝の水が完全にせき止められた衝撃の瞬間画像と映像 : カラパイア



ソース:
The day Niagara Falls ran dry: Newly-discovered photos show the moment the iconic waterfall came to a standstill

 アメリカ滝では、1931年と1954年に大規模な地すべりが発生しており、このまま侵食が進めば滝が崩壊してしまうとのことで、1969年の6月から11月の6ヶ月間、米軍主導によボルトを埋め込んで補強する工事が行われたという。

 27,800トンの岩を積み上げ仮説のダムを建設。1969年6月12日、12,000年以上流れ続けていたナイアガラの滝の水の流れは完全に止まった。このダムにより、水は完全にせき止められ、圧倒的な水量を誇るナイアガラも、ほぼ水のない状態へと変貌していったんだ。


ここで、iはstevanne丘の上の情報を見つける

 これらの画像は、米コネチカット州に住む、ラス・グラッソン氏の自宅から偶然発見されたという。


何がオサマに起こった

 すべての工事が完了し、1969年11月25日、2650人の見物客が見守る中、灌漑式が行われた。

2012年5月30日水曜日

FOREIGN AFFAIRS JAPAN - 1930年代の悪夢が再現されるのか―― 高まる保護主義の脅威(部分公開)


<ドルとグローバルインバランスのジレンマ>

 現在の国際金融システムは大恐慌期とは大きく違っているし、柔軟性も高い。ドル、ユーロ、ポンド、円といった主要通貨と、スイス・フラン、オーストラリア・ドル、カナダ・ドル等の各国通貨は相互に変動するシステムのなかで機能している。

 しかし二つの例外がある。ユーロ圏は自国通貨を放棄したが、その結果、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペインが、1930年代初頭にドイツとイギリスが経験したような問題に直面して対応に苦慮している。かつてと違うのは、これらの国々が欧州中央銀行、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)を通じて、困難な時期を乗り越えるために一時的な支援を受けられることだ。

 もう一つの大きな例外は、いわゆるドルブロックが存在することだ。1997年、� �998年のアジア金融危機後、金融危機に襲われたアジア諸国の一部は、将来起こるかもしれない国内銀行の取り付け騒ぎやグローバル経済の停滞に対する保険として、ドル準備を積み増していくようになった。

 ほぼ同じ時期に、中国はアメリカの消費者に安価な製品を提供する輸出主導の経済成長戦略を強化した。こうしてアジア諸国の多くは、それぞれの目的を達成するために、自国通貨を過小評価した人工的なレートで米ドルにペッグさせることを選択した。ある推定によれば、これらのアジア諸国との取引が、現在もアメリカの貿易の40%を占めている。

 現在の中国も、1920年代のフランスのように、自国通貨を過小評価した為替レートを設定し、ドルペッグを維持するために膨大なドル準備を蓄積している。� �内のインフレが輸出競争力を阻害しないようにするには、信用拡大を制限し、この巨額な準備資産を中立化しなければならない。こうすれば、人民元を安く保ち、中国製品の輸出競争力を維持できる。だが、その結果、米中間の貿易不均衡を削減する二つの重要なメカニズムが機能しなくなっている。

2012年5月19日土曜日

9943886第1回目


米国特許法第256条を参照のこと。

17.     当事者は、欺瞞的意図についての証明義務を有しているのがいずれの側であるかについて意見を異としている。被告は、発明者の不当併合によって特許が無効になるには、原告が明白かつ確証的な証拠をもって欺瞞的意図を証明すべきであると主張する。一方原告は、共同発明者が不適切に特許に記載されていることが特許の異議申立て[*10]によって一旦証明されれば、欺瞞的意図なくして発明者の誤記があったことを証明する責任は、特許権者に移行すると主張する。

18.     Mas-Hamiltonは、特許第656号がLarry Cutterを発明者として不正確に記載していることを理由に、その無効を主張する。さらに、特許出願書類には、Nick Gartner およびPeter Phillipsがアメリカ人であると不正確に記述している。

19.     特許第656号には、Gartner氏およびPhillips氏の共同発明者がCutter氏であるとの不正確な記載がある。錠設計に対するCutterの貢献は、GartnerおよびPhillipsが発明を実施した後のことである。Gartner氏は1989年11月に実施可能な試作品をMoslerに持ち込んだが、Cutterは1990年1月になってからLaGardの従業員となったのである。Cutterは1990年後半になって、試作品をMoslerに提出するようにLaGardに提案した。Gartnerはこれらの活動があったために、Cutterが共同発明者であると錯覚した。

20.     1996年9月30日にLaGardは特許庁に登録発明者の訂正を申請した。LaGardの申請は、「当初記載された発明者もしくはその複数の発明者によって証明された事実の宣誓書」[*11]を含むという点で連邦行政命令集37 第1.48(a)(1)条に規定される特許庁の要求事項に従うものであった。発明者であるGartnerおよびPhillipsならびに誤って発明者と記載されたCutterは、誤記によって特許第656号に発明者と記載されてしまったこと、ならびに誤記は同氏の欺瞞的意図によるものではないことを明示し、願書とともに宣誓書を提出した。

21.     さらに発明者を訂正するLaGardの申請は特許庁に、GartnerおよびPhillipsの国籍にも誤りがあったことを通知した。

22.     1997年2月3日、特許庁は、登録発明者の誤記はいかなる欺瞞的意図によるものでもないとしてLaGardの登録発明者訂正の申請を認容した。DX115を参照のこと。

23.     欺瞞的意図があったか否かについての証明義務をいずれの側が負うとしても、裁判所は公判において提出された証言および証拠によって、特許出願書の国籍の誤記およびCutterが誤って発明者として登記されたことは、欺瞞的意図によるものではないという判断に落ち着いた。

24.     よって、裁判所は特許第656号が不正確な発明者の登記により無効になるとはされないとした。

B. 他の者による発明

25.     他の者が発明した事項[*12]については、いかなる者も特許の権利を有していない。 Bergyについて、596 F.2d.952, 960 (C.C.P.A. 1979)を参照のこと。特許は、その主題事項の第一の発明者が他の者である場合には無効となる。

26.     米国特許法第102(g)条によれば、特許の権利を有するには、以下の事項に当てはまらないことを条件とする。

(g)   出願人の特許についての発明以前に、本国で他の者がそれを発明し、かつその発明を放棄、禁止、隠匿していない場合。発明の優先順位を決定する際には、それぞれ発明の考案日と発明の実施日のみならず、他の者による考案以前の時点から、最初の考案者であり最後の実施者となってしまった者が合理的な努力を行っていたかどうかに対して配慮がなされなければならない。

27.     一方の当事者がその発明を最初に考案したこと、また後になって発明を実施したことにおいて合理的な努力が行われていたことを証明しない限り、発明を最初に実施した当事者に発明の優先順位が与えられる。Price v. Symsek, 988 F.2d 1187, 1190 (Fed. Cir. 1993)を引用するMahurkar v. C.R. Bard, Inc., 79 F.3d 1572, 1577 (Fed. Cir. 1996)を参照のこと。「構想」とは、発明という行為の中での知的な分野の完全履行を意味する。発明が意図された目的どおりに機能したときに、実施が行われたものとみなされる[*13]。

28.     発明先行についての防禦において、Mas-HamiltonはClayton MillerおよびMichael Harveyが、特許第656号において説明され請求されている錠をLaGardの発明者が発明する以前に、X-07錠を発明していたと主張した。

29.     Nick GartnerおよびPeter Phillipsは長年、錠産業に従事してきた。いずれの者も少なくとも、錠の装置に関する30以上の特許の有名な発明者である。GartnerおよびPhillipsの特許は、Millerを含む多くの錠のメーカーおよび販売業者に実施許諾が与えられた。Gartnerは、「知識ある精神異常者」から原子力潜水艦トライデントを保護するために海外で使用できる錠の開発において成し遂げた業績について、海軍省およびFBIから褒賞を受けた。

30.     1989年11月に、George HerrmannおよびGartnerは、オハイオ州ハミルトンのMosler, Inc.に錠の試作機を持ち込んだ。Herrmann氏は、現在もそして1989年時点においても、LaGardの製品を販売する独立販売店代表であった。そこで、HerrmannとGartnerは、Moslerが実施許諾に基づく錠の製造に興味を示すよう、Moslerの技術者に錠を提示した。

31.     LaGardがMoslerに持ち込んだ錠は組み合わせを有していなかった。その代わりに、[*14]スイッチを閉めることによってソレノイドに電子シグナルが送られるものであった。n4シグナルがソレノイドに送られると、ダイアル作動によって、錠の装置が錠を開ける仕組みになっていた。より複雑な電子組み合わせについての設計および実施は公知のものであり、発明の重要な特徴ではなかった。

LaGardの発明の時点では、電子、複数番号組み合わせサーキットは公知のものであった。このような装置は米国特許第4,745,784号に説明されており、特許第656号においても、このようなよく知られたサーキットの例として、この特許を挙げている。

32.     そこでLaGardは1989年11月には、特許第656号の錠を実施していた。明らかなように、錠はLaGardが実施する以前に考案されていたものである。LaGardの1989年11月の試作品が実施のためには適合しなかったとしても、少なくとも試作品は、その日付における考案の証拠となる。LaGardは1990年8月から9月にかけて、複数の番号組み合わせによる錠の最初の試作品を製作した。その試作品は、Moslerが今後の実施許諾のために錠を評価する目的をもって、Moslerに数個の錠を提供するという契約の一部であった[*15]。LaGardがMoslerに送った錠は、実用に適合するものであった。LaGardは1989年11月からMoslerへの試作品の完成までの間に努力をしていたわけである。

33.     X-07錠の発明者の一人であるClayton Millerは錠前業者等の流通市場の顧客に錠や錠の部品および工具を販売する会社であるLockmastersの会長である。Millerはこれまで長年錠産業に従事してきており、自身の特許もいくつか有している。LockmastersはLaGardの独占的流通市場販売店である。LaGardの販売店としてMillerは、特許第656号の錠を閲覧する機会があったかどうかという直接的な証拠はないものの、LaGardの事務所および工場に出入りできる立場にあった。

34.     X-07錠の発明者の一人であるMichael Harveyは電子技術者であり、アポロ・スペース・プログラムに使用された装置およびF-18で使用されたデジタル方式による安定サイトの開発を行った。1980年当初、GartnerおよびLaGardは、自動ダイアラー開発のためにHarveyと委託の契約を交わした。HarveyがLaGardの顧問業務を最後に行ったのは1982年であった。

35.     1980年半ばに、共通役務庁(GSA)からClayton Millerに、安全のための高セキュリティー組み合わせ錠の基本的技術に関する調査[*16]についてアプローチがあった。MillerはGartnerとの長年にわたる関係から、LaGardが自動ダイアラーについて行った業務について知識があり、さらに詳しい情報を得るためにGartnerと業務の提携を交わした。GartnerはMillerに、Harveyの電話番号を教えた。MillerとHarveyはC&M Technologyを設立し、機械的に錠の位置を探知し、自動ダイアラーだけを使用している時よりもより迅速に錠をあけられるように、自動ダイアル機能および音響情報を使用する装置である自動マニピュレータを開発した。自動マニピュレータは機械型組み合わせ錠をあけるための方法を提供するものだったので、HarveyとMillerは次世代の高セキュリティー組み合わせ錠の新しい型のニーズがあるものと判断した。HarveyとMillerは1986年頃にX-07錠の業務にとりかかった。

36.     Harvey氏がプロジェクトにかかわる者に試作機の実地説明に成功した1990年4月26日には遅くともX-07錠が実施品となっていた。

37.     証拠および証言を聴取した結果、裁判所は、X-07錠と特許第656号とは、別々の発明者によって独立して開発された別個の発明であるとし、その旨判断している。したがって原告は、[*17]明白かつ確証ある証拠によって、LaGardの特許第656号が他の者の発明であると立証できなかった。n5

C. 派生

38.     Mas-Hamiltonは、LaGardはその発明を他から導き出したものだとして、特許第656号が無効であると主張した。派生とは、他から発明を借用し、自身の特許とすることをいう。Lamb-Weston, Inc. v. McCain Foods, Ltd., 78 F.3d 540, 549 (Fed. Cir. 1996) (Newman, J., dissenting)を参照のこと。その発明が先行技術であるか否かには関連しない。参照は前述に同じ。指定発明者が、特許請求されている知識を他のものから取得したか、あるいは少なくとも特許請求のかなりの部分をとってみると、その発明が従来の技術の一つに自明であることを証明しなくてはならない。New England Braiding Co. v. A. W. Chesterton Co., 970 F. 2d 878, 883 (Fed. Cir. 1992); 米国特許法第 102(f)条 (特許が請求されている主題事項を自身で発明した限りにおいて…その者は特許を受ける権利を有する[*18])。

39.     前述のように、証拠および証言を聴取した結果、裁判所は、X-07錠と特許第656号とは、別々の発明者によって独立して開発された別個の発明であるとし、その旨判断している。したがって原告は、明白かつ確証ある証拠によって特許第656号が他の者からの派生であると立証できなかった。

D. 販売による無効

40.     Mas-Hamiltonは、特許第656号の主題が1990年12月17日付の特許出願の1年前よりも以前にLaGardによって「販売」されており、したがって102(b)条に基づき特許は無効であると主張している。原告はLaGardが、1989年11月にMoslerに試作品の錠を持ち込んだときに、特許第656号を販売したと主張している。申し立てられた発明が、特許出願の1年前よりも以前に、本国において「販売」されていた場合には、発明者は特許請求権を喪失する。Buildex. Inc. v. Kason Industries, Inc., 849 F.2d 1461, 1462(Fed. Cir. 1985); 米国特許法第102(b)条を参照のこと。発明者は、発明の商品化から1年以内に[*19]特許出願書類を提出しなければならないという要件を厳格に遵守する必要がある。Mahurkarについては 71 F.3d 1573,1577(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。

41.     発明は、販売の可能性が明確である場合もしくは販売のオファーがある場合に、販売されているとされることがある。Buildex, Inc. v. Kason Industries, Inc., 849 F.2d 1461, 1462(Fed. Cir. 1985)を参照のこと。特許が無効とされるためには、必ずしも販売が完全なものでなければならないわけではなく、会社からの販売のオファーで十分であろう。上記を参照のこと。オファーが受諾されたか否かにかかわらず、1つの販売オファーのみで特許が無効とされる。A.B.Chance Co. v. RTE Corp., 854 F.2d 1307, 1311 (Fed. Cir. 1988)を参照のこと。手元に商品化された市場性のある製品がない場合であっても、申し立てられた発明がすでに「販売」されている場合には、その特許は無効とされる可能性がある。Barmag Barmer Maschinenfabrik AG v. Murata Mach. Ltd., 731 F.2d 831, 838(Fed. Cir. 1984)を参照のこと。審理される点は、申し立てられた発明を提供する者が、顧客に提供できるかもしくは提供された製品を自身が有していると考えていたか否かということにある。Paragon Podiatry Laboratory, Inc. v. KLM Laboratories, Inc., 984 F.2d 1182, 1187, n.5.(Fed. Cir. 1993)を参照のこと。このような販売オファーは、その詳細が開示されていない場合であっても、特許第656号を無効にすることができる。RCA Corp. v. Data General Corp., 887 F.2d 1056, 1060(Fed. Cir.1989)を参照のこと。

42.     [*20]本事件においては、Mas-Hamiltonは明白かつ確証ある証拠によって特許第656号出願の1年前よりも以前に、明白な販売もしくは販売オファーがあったこと、また販売もしくは販売のオファーにかかわる主題事項が完全に請求された発明を予期していたことを証明しなければならない。Mahurkar v. Impra, Inc., 71 F.3d 1573, 1576(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。販売であるかどうかの決定は、第102(b)条の基本となる方策にかんがみて、状況全般によるものである。前述と同じ1577; Envirotech Corp. v. Westech Engineering, Inc., 904 F.2d 1571, 1574 (Fed. Cir. 1990)を参照のこと。これらの方策には以下が含まれる。すなわち、(1)一般に自由に入手できると考えられる公有の場から、発明を除去することを阻止すること、(2)発明の迅速かつ広範な開示を促進すること、(3)発明者が特許の潜在的経済価値を決定するために、販売活動後に合理的な時間の猶予を与えること、ならびに(4)制定法上の規定の期間を超えて、発明者が自身の発明の商品としての販売促進をすることを禁止することである。上記と同様を参照のこと。さらに販売による無効事項の基本となる方策には、制定法上の条項の冒頭にしたがって、発明者が自身の発明の商業価値[*21]から不当な利益を得ることを阻止する方策も含まれる。Ferag AG v. Quipp, Inc., 45 F.3d 1562, 1566(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。連邦巡回裁判所は、特許を付与された発明が「販売」されたかどうかを決定するための焦点は商品化にあると強調した。Mahurkar v. Impra, Inc., 71 F.3d 1573, 1577(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。

43.     LaGardは、Moslerとの取り引きの目的は特許第656号の技術ライセンスについて交渉しこれを取得することであったと主張している。「発明における権利および潜在的な特許権の譲渡もしくは販売は、第102(b)条の意味する範囲においては発明の販売とはみなされない。」とある。Moleculon Research Corp. v. CBS, Inc., 793 F.2d 1261, 1267 (Fed. Cir. 1986) を参照のこと。

44.     公判において聴取された証言によって、LaGardが1989年11月に初めてMoslerを訪問したのは、FF-L-2740の仕様に合致する製品を開発したことをMoslerに明示するためであったとの結論にいたらざるを得ない。LaGardはMoslerに、特許第656号に説明される装置と基本的に同一の試作品を提示した。さらに、共通役務庁(GSA)へのプレゼンテーション用の追加試作品の提供を申し出た。LaGardは決してMoslerに、発明の販売を提案したわけではなかった。提案したのは、[*22](1)発明の生産権、もしくは(2)政府に対する発明の市場売買の独占的権利、のいずれかの実施許諾である。したがって状況全般から見て、原告は、1990年12月17日付の特許出願の1年前よりも以前に特許第656号が「販売」されていたという、明白かつ確証ある証拠を確立できなかった。

E. 公然実施による無効

45.     Mas-Hamiltonは、特許出願の1年前よりも以前に、LaGardが試作品の錠をMoslerに持ち込んだ時点で、特許第656号は「公然実施」されていたとし、したがって第102(b)条に基づき特許は無効とされると主張している。米国における特許出願の1年前よりも以前に、本国で公然実施されていた発明には、特許が付与されない。米国特許法第102(b)条を参照のこと。

46.     「公然実施」とは、発明者以外の者であって、発明者にいかなる制限、禁止もしくは秘密保持義務を負うことのない者による、特許請求されている発明の使用を含むものと定義される。Lough v. Brunswick Corp., 86 F.3d 1113, 1119(Fed. Cir. 1996); Baxter International Inc. v. Cobe Laboratories, Inc., 88 F.3d 1054, 39 U.S.P.Q.2D (BNA) 1437, 1440(Fed. [*23] Cir. 1996)を参照のこと。第102(b)条の公然実施による無効は以下をその要件とする。すなわち、(1)発明が公然と使用されていること、および(2)使用は当初、試験的なものを目的としていなかったこと、である。Allied Colloids, Inc. v. American Cyanamid Co., 64 F.3d 1570, 1574(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。製品は、完成品が方法を問わず商業的に利用されているものであれば、「公然実施」されているとみなされる。Shatterproof Glass Corp. v. Libbey-Owans Ford Co., 758 F.2d 613, 622(Fed. Cir. 1985)を参照のこと。

47.     ある特定の事項が公然実施による無効の原因となるか否かを決定する際には、状況全般が考慮されなければならない。U.S. Environmental Products, Inc. v. Westall, 911 F.2d 713, 716(Fed. Cir. 1990); Allied Colloids, Inc. v. American Cyanamid Co., 64 F.3d 1570, 1574(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。公然実施が存在するか否かは、その状況全般が公然実施による無効の基本となる方策と、どのように一致するかに依存する。Lough v. Brunswick Corp., 86F.3d 1113, 1122, n.5(Fed. Cir. 1996)を参照のこと。これらの方策には以下の事項が含まれる。すなわち、(1)一般に自由に入手できると考えられる公有の場から、発明を除去することを阻止すること、(2)発明の迅速かつ広範な開示を促進すること、(3)発明者が特許の潜在的経済価値を決定するために、販売活動後に合理的な時間の猶予を与えること[*24]、ならびに(4)制定法上の規定の期間を超える期間にわたり、発明者が自身の発明の商品としての販売促進をすることを禁止することである。上記と同様を参照のこと。

48.     公然実施を決定する際に考慮されるべき要因には、公然に発生する活動の性質、公然実施の入手方法や公然実施の知識、使用者に課される秘密保持義務の有無、試験的活動の進行記録およびその他の証書の保管の有無、発明者もしくは発明者の代理以外の者による実験実施の有無、種々の試験実施方法、商業上の状況と比較した試験の規模、類似する製品の試験との比較における試験時間、ならびに試験製品のための支払の有無等が含まれる。Allied Colloids, Inc. v. American Cyanamid Co., 64 F.3d 1570, 1574(Fed. Cir. 1995)を参照のこと。

49.     公判において聴取された証言によって、LaGardが1989年11月に初めてMoslerを訪問したのは、FF-L-2740の仕様[*25]に合致する製品を開発したことをMoslerに明示するためであったとの結論にいたらざるを得ない。LaGardはMoslerに、特許第656号に説明される装置と基本的に同一の試作品を提示した。さらに、共通役務庁へのプレゼンテーション用の追加試作品の提供を申し出た。LaGardは決してMoslerに、発明の販売を提案したわけではなかった。提案したのは、(1)発明の生産権、もしくは(2)政府に対する発明の市場売買の独占的権利、のいずれかの実施許諾である。LaGardとMoslerとの間に秘密保持契約が締結されたという証拠は提出されていないものの、裁判所は業界における過去の慣例、およびLaGardの代表であるHerrmannおよびGartnerの証言に基づき、かつ業界� �従事する者の間の訴訟という性質にかんがみて、試作品の設計は秘密とされるものと判断した。この結論は、特許第656号の錠の開発に費やされた膨大な調査および費用に照らし合わせてみれば当然といえる。そうでないとすれば、LaGardが1万米ドルたらずで発明の構想を手放したということになるが、これについて裁判所は、公判において提出された証拠及び証言からは、その事実認定をなすことができなかった。さらにMoslerは特許第656号の非制限的、非限定的使用権を付与されていなかった。むしろ、[*26]Moslerの関心をライセンスに引き付けるというLaGardの目的に応じて、Moslerは単に制限的、限定的使用権を付与されただけであることが裁判所には明白となった。したがって原告は、LaGardによる特許出願の1年前よりも以前に製品が公然実� �されていたという、明白かつ確証ある証拠を立証できなかった。

F. 最良の態様

50.     Mas-Hamiltonは、最良の態様についての要件を満たしていないことを理由に、特許第656号が無効であると主張している。米国特許法第112条に基づけば、特許明細書は発明者が意図した発明実施の最良の態様を記載しなければならない。最良の態様についての要件の目的は、発明者が、発明の好ましい実施例を実際は考案しているのに、これを公の場から隠匿しつつ特許出願をすることを回避することにある。DeGeorge v. Bernier, 768 F.2d 1318, 1324(Fed. Cir. 1985)を参照のこと。最良の態様についての要件は、特許出願人が特許のシステムに対して、「公正かつ率直」であることに確実を期すためのものであり、―これは特許付与の対価が満たされるべきであるという要件である― 発明実施についての、自身が知り得る範囲における最良の態様の適切な開示[*27]を出願時に行わない限り、他の者に対する独占的な権利を取得することはできないというものである。Amgen, Inc. v. Chugai Pharmaceutical Co., Ltd., 927 F.2d 1200, 1209-10(Fed. Cir. 1991)を参照のこと。

51.     最良の態様についての要件に違反があったか否かを決定するための審査は以下の通り2部構成になっている。すなわち、(1)発明者が出願時に、発明者が最良と考える、特許請求される発明の実施態様を知っていたか否か、および(2)通常の能力を持った当業者が最良の態様を実施することができるような適切な開示であるか、もしくは発明者は自身の好ましい態様を公の場から隠匿したかどうか、についてである。Chemcast Corp.v. Arco Industries Corp., 913 F.2d 923, 926(Fed. Cir. 1990)を参照のこと。特許が最良の態様についての要件に適合しているかどうかを決定する際に、以下の基本的な事実審問がなされる。すなわち、(1)出願時に、発明者が特許請求される発明の実施について最良の態様を有していたか否か、および(2)発明者が特許請求される発明の最良の態様を有している場合に、通常の能力を持った当業者が実施できるように、発明者が最良と考える態様を特許明細書が適切に開示しているか否か、を決定しなければならない[*28]。United States Gypsum v. National Gypsum Co., 74 F.3d 1209, 1212(Fed. Cir. 1996)を参照のこと。

52.     原告は、特許第656号はソレノイド・ハウジングが真鍮から形成されることが望ましいと開示している、と主張する。しかしながらその指図に従うと、原告は装置装置が機能しないものであると主張する。特許出願前にLaGardが製作したモデルの1つには真鍮及び銅もしくは鋼鉄からソレノイド・ハウジングが形成されており、申し立てられた発明者はそのモデルについて知っていた。したがって原告は、申し立てられた発明者は、特許第656号に開示された申し立てられた発明実施のより良い態様を知っていたと主張する。実施できない実施例を開示することによって、申し立てられた発明者は最良の態様を隠匿した、と原告は強く主張する。Chemcast Corp. v. Arco Industries Corp., 913 F.2d 923, 926(Fed. Cir. 1990)を参照のこと。

53.     さらに原告は、ソレノイド・ハウジングおよびレバーの許容誤差(適正な動作のための部品の精密度)は、特許第656号の錠の適正な実施に重要である、と強く主張する。特に公判における証言によって、特許第656号の実施例において示される錠は、戻り止め[*29]ボールがカム・ホイールに系合している状態でダイアルが継続して回転すると、ソレノイド・ハウジングがハウジングの右側に接触し、このために作動しなくなってしまうことを示唆した。特許第656号においては、必要かつ好ましい装置製作の方法についての説明の開示がなされていないが、申し立てられた発明者は特許出願以前にこれらを知っていたものである。原告はこの情報が特許第656号の錠の実施に重要なものであると主張する。

54.     特許第656号には、ソレノイドの通電時間に関する開示がない。原告は、これがソレノイドと錠の作動に大変重要であると主張する。特許第656号出願前に、申し立てられた発明者はソレノイド通電時間は短くあらかじめ設定された時間で十分であり、試行錯誤の結果、試作品に関しては、錠の動作のための実際的な最短時間は約3秒であると判断した、と原告は主張している。この時間設定は特許出願前に、LaGardのモデルについてはソフトに組み込まれていた。原告は、この情報が特許第656号の錠の実施に大変重要であると強く主張している。上記のことから、申し立てられた発明者は[*30]この重要かつ必要な要件および申し立てられた発明のより良い実施方法を十分に知りつつ、これを隠匿し、開示を怠ったのである。

55.     公判において聴取された証言によって、通常の能力を持った当業者としては、適正な動作のためにソレノイドにはある種の磁気物質が含まれることが必要であることを望むであろうの結論にいたらざるを得ない。同様に、特許第656号に許容誤差もしくはソレノイドの通電時間の詳細情報が欠落しているために、通常の能力を持った当業者による特許第656号の実施が妨げられるものではないと考えられる。したがって裁判所は、特許第656号が最良の態様についての要件を満たしていないために無効であるとの、明白かつ確証ある証拠を原告が立証できなかったとした。

2012年5月17日木曜日

碧き空は暮紅(くれない)に落ちる



 人々は再び、空を見上げることしか知らない。

 重力に捕らわれ、ただ見上げるしかない青い空。
 
 遥か天空に、巨大な雲があった。
 
 その雲は、どんな天候であろうとも形を変えず、どれほどの強風に吹かれようとも流されることはない。
 
 空を我が物顔で舞う鳥たちすら雲を覆う力場に阻まれ、雲の内部に入ることはできない。
 
 誰一人到達することのできないその内に存在するのは、一つの島だ。
 
 幾何学模様と、遠く滅んだ言語が刻まれた光の円環によって七重に囲まれた島は、その大部分を緑の木々に覆われているが、島の円周部には砂浜も見られる。

 砂浜の外には青い海が広がり、円環に触れる端の部分で滝のように流れ落ちていた。
 
 しかし、どれだけの水が流れ落ちても海の水位は全く変わらず、海に満ちる水は、どこからか無尽蔵に湧き出していた。
 
 大自然をそのまま切り取ったかのような、天空の島。
 
 その島にも一つだけ、明らかな人工物があった。
 
 島の中央。
 
 島が戴く王冠のような建築物。
 
 汚れ一つ無い純白の壁によって構成されるそれは、城だ。
 
 ちっぽけな、けれど、誰よりも高みに存在する島の王のための。
 
 天空から大地を見下す、絶対的な力持つ王のための。
 
 いや、王ではない。
 
 王とは人を支配し統治する者の称号だ。
 
 ならば、世界の事象の全てを支配する者を何と呼ぶのか?
 
 答えは一つ。
 
 その城こそ、今の世界を作り出した――神の住まう城。

【碧き空は暮紅くれないに落ちる】

 白亜の神の座。
 
 天空島の頂点たる城は、しかし、その内部は意外に普通だ。
 
 いわゆる『お城』のイメージとは遠く、むしろスケールの大きな一軒家というのがしっくり来るだろう。
 
 その城の一室、ここも普通の家にありそうな部屋だった。
 
 フローリングの床にカーペットが敷かれ、紙袋が載っているクリスタルのテーブルと柔らかそうなソファ。
 
 壁には薄いモニタのテレビがかけられていて、下界の様子が映っている。
 
 外に直接面する西の壁は全面がガラス張りの窓で、そこから島を見下ろすことができた。
 
 どこにでもありそうなリビングという印象だが、部屋の片隅に置かれた巨大な鏡だけが異彩を放っている。
 
 細かな装飾の刻まれた艶のある木製の枠に、オレンジ色をした風変わりな鏡面。
 
 それだけは、物語に出てくるお城に置いてありそうな品だった。
 
 部屋のソファに、一人の男の姿がある。
 
 歳は三十代前半くらいだろうか。
 
 黒い髪をオールバックに撫でつけ、白色のスーツに身を包んでいる。
 
 壁にかけられた時計がカチカチと音を刻む。
 
 男は、時計を気にしながら、何度も部屋のドアの方へと視線を向けていた。
 
 そのとき、ガチャリと音を立ててドアが開き、一人の少女が部屋の中に入ってくる。
 
 まだ幼い。十歳に届くかどうかという年頃だろう。
 
 背中の中ほどまで金色の髪を伸ばし、整った顔には翠玉の瞳。
 
 シンプルな白いワンピースに身を包んでいて、大きく開いた背中から透き通るような白い肌が見える。
 
 幼いながらも十分に美貌と呼べる要素を兼ね備え、どこか人形のような作り物めいた美しさを持っている少女だった。
 
 それに比べると、先の男性はどこにでもいそうなただの人間にしか見えない。
 
 だが、この城の中にいる、それだけでただの人間などではではない。
 
「来たわよ、神様。私に何か用かしら?」

 整った唇を開き、少女が年齢に不釣合いな口調で問いかける。
 
 『神様』と呼びながらも、男に払う敬意など持ち合わせていないようだ。
 
「あぁ、アル。来たか」

 男の方も、その扱いを特に気にする様子を見せず、にこやかに少女を迎え入れる。

「今日はお前にプレゼントがあってな」

 テーブルから紙袋を取り、アルと呼んだ少女に向けて投げる。
 
 アルは飛んで来たそれを受け取り、がさがさと袋の口を開いた。
 
 手の上に袋をひっくり返すと、色とりどりの細い紐が沢山出てくる。
 
「あら、リボン?」

「そうだ。気に入らなかったか?」

 男の言葉に、アルは首を横に振る。

「いいえ、ちょうど欲しかったのよ」

「そうか。良かった」

 安心したように笑みを浮かべる男。

「それじゃ、貰っていくわね」
 
 アルは、プレゼントを貰うのが当然であるかのように礼も言わないで背を向けた。
 
 小さな背中がドアを潜って外に出て行き、閉じられたドアが音を立てて閉まる。
 
 軽い足音が遠ざかって聞こえなくなるのを確認して、男はソファの背もたれに身を預けた。
 
 右手で目を覆い、深く息を吐く。
 
 手の下に見えている唇が歪み、噛み締めた歯がギリと音を立てた。
 
「くそ……どうして俺が、あんな奴に気を使わなければならんのだ……っ」
 
 アルに対して浮かべていた笑顔は、もう欠片も残っていない。
 
 男は苛立ちを露に、ソファから身を起こす勢いで手を振り下ろした。
 
 大きな音を立ててクリスタルのテーブルが砕け散り、破片に引き裂かれた腕を血が伝う。
 
 血がカーペットに滴り落ち、布に赤い染みをつけていった。
 
 そのとき、ドアを控えめに叩く小さな音が響く。
 
「パパ? 大きな音がしたけど、どうしたの?」
 
 ドアの向こうから、可愛らしい声が聞こえる。
 
「ま、マホ!? ちょっと待て!」
 
 男は慌てた声を出すと、自分が壊した物へと目を向けた。
 
 すると、壊れたテーブルや汚れた絨毯がかき消すように消えてしまう
 
 そして、次の瞬間には壊れたり汚れたりする前の家具がそこに現れていた。
 
 男の腕についていた傷も、跡形も無く消えている。
 
「よし、もう良いぞ」

 満足げに頷いて男がそう言うと、ドアが開いて一人の少女が姿を見せた。
 
 年齢はアルよりもいくらか幼い。
 
 ショートボブの黒髪と、黒い瞳の少女だ。
 
 アルのような美貌は持っていないが、年相応の可愛らしさという点では彼女に軍配が上がる。
 
「パパっ!」

 とてとて、という擬音の似合いそうな足取りで男に駆け寄り、空色のワンピースの裾を揺らしながら勢いよく飛びつく。
 
 相好を崩した男はマホの体を受け止め、そのまま自分の膝の上に乗せる。
 
 マホは膝の上でもぞもぞと動いて座り易い位置を見つけ、父の顔を見上げる。
 
「パパ、パパ。おっきい音がしてたけど、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。ちょっと机にぶつかっただけだからな」
 
「そうなの? 痛くない?」

「痛くない痛くない。マホは優しいな」

 穏やかな笑みを浮かべた男が優しい手つきでマホの頭を撫でる。
 
 今になって比べるてみるとわかるが、アルに向けていた笑顔とは随分と違う。
 
 その笑顔に比べると随分と自然な表情だった。

 明らかに、アルへの態度が取り繕ったものだとわかる。

「ねぇ、パパー」

 くすぐったそうに目を細めて、マホが男に甘える。

「どうした?」

「まほね、お絵かきしたい!」

「お絵かきか、あぁ、いいぞ。マホは本当にお絵かきが好きだな」

 即決で男が了承する。
 
 マホの言うことなら何でも聞いてしまいそうな、そんな勢いだった。

「やったぁ! それじゃあ、お絵かきの道具取ってくるね!」

 そう言って膝の上から下りようとするマホを、男は「待った」と言って止める。

「取りに行かなくてもいい。俺が用意してやる」

「ほんと?」

 首を傾げて聞くマホに頷き返し、男はパチンと指を鳴らした。
 
 その瞬間、テーブルの上にスケッチブックと箱入りのクレヨンが現れる。
 
 何も無いところから、突然に。
 
 それは、イメージによって無から有を創り出す神の業。

 この世界でたった一人が持つ――それを持つからこその神。
 
 男を神とする想造の力。

「わぁ、パパすごーいっ」

 はしゃいだマホが男の膝の上から飛び降り、テーブルからスケッチブックとクレヨンを取る。
 
 そして、それを一度ソファに置いてから「んー、よいしょっ」と可愛らしい掛け声を上げながら男の膝の上によじ登った。
 
 膝に座り直してからスケッチブックを手に取り、真新しいページを開く。

「何を描くんだ?」

「えっとねぇ――」

 男に聞かれたマホはきょろきょろと部屋を見回し、
 
「じゃあ、お外!」

 窓から外を指差しながらそう答えた。

 城から少し離れた森。
 
 多種多様な木々が、青々とした葉に覆われた枝を複雑に絡め合っている。
 
 しかし、森の中は少しも暗くない。
 
 空を覆う白い雲が放つ光は、重なり合った葉に遮られることなく、森の中を明るく照らし出す。
 
 十分な光を浴びた地面には短草が生い茂り、様々な花が若草色の上を彩っていた。
 
 その天然の絨毯の上に、一人の少女が立っている。
 
 年齢は十代の後半辺りだろうか。
 
 伸ばし放題の黒い髪は膝下まで届き、片側に寄せた前髪が顔の右半分を隠していた。
 
 見えている左目は色素の薄い灰白色。
 
 白い一枚の布を、服のように体に巻きつけているだけの格好だった。
 
 少女は木製のイーゼルに立てたカンバスに向かい、木炭を持った手を真剣な顔で動かしている。

 灰色がかった布に黒い線で描かれているのは、その位置から見える風景だ。
 
 まだ途中なのか、描かれている風景は大まかな輪郭だけだった。
 
 バサ――

 カンバスに向かう少女の耳が、小さな羽ばたきの音を捉えた。

「あれ? 鳥かな?」
 
 木炭を持った手を止めて、そう少女が呟いたとき、
 
「アーーーズっ」

「きゃっ」

 大きな声を発しながら、小さな影が少女の背中に飛びついた。
 
 少女はその勢いに押されて、二人一緒に地面に倒れる。

 イーゼルを避け、柔らかな草の上に倒れると、飛びついてきた影が少女の上から下りて立ち上がる。

 少女はころりと転がって仰向けになり、「もう、危ないでしょ。アル」と唇を尖らせた。
 
「ふふ、ごめんなさい、アズ」
 
 飛びついた少女――アルは悪びれない態度で笑みを浮かべ、絵を描いていた少女――アズに手を差し出した。
 
 アズはそれに応えて手を伸ばし、一瞬、虚空を彷徨った手をアルが捕まえて引っ張り上げる。
 
 小さなアルが、優に頭一つは高いアズを引き上げると言うのは奇妙な光景だが、
 
 その細腕にどれだけの力があるのか、アルはさしたる苦労も見せずにアズを立ち上がらせた。
 
「ありがとう、アル」

「ええ、どういたしまして」

2012年5月16日水曜日

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Visit Grand Canyon National Park
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